認知症の人の気持ちがよくわかる本

認知症、特性のある子供、障害者と接する時にヒントとなる本

福祉の勉強を始め3年目。去年から障害者分野の仕事をパートでしています。「福祉」って一言で言っても、児童や障害者、更生保護、公的扶助、片親家庭の支援。そして、一番メジャーなのは高齢者でしょうか。

今日ご紹介するのは認知症に関する本ですが、読みながら子どもとの接し方、障害者との接し方にも通ずるものが大いにある内容でした。

聞き方・話し方次第で、相手が安心するというのは、認知症に限定せず、よくあることです。

接する時に相手の気持ちをよく考える必要のある人たち。たとえば、特性を抱える子どもや病気を抱える障害者、認知症と共に生きている人達。相手がどのような状況にあるか理解した上で接する必要があります。

私自身も何か悩みがある時に友人が自分の発した言葉以外の部分も理解してくれていると、絡まった心がほどかれるように癒されます。

この本の中では、主に認知者の人とのコミュニケーションやケアについて書かれています。

認知症の人の「中核症状」はもちろんですが、それと共にBPSDを見逃さず、注視して、その人の状況を理解する必要性が分かりやすく書かれています。

中核症状は脳の神経細胞が壊れることによって起こる症状。認知症の直接の原因に関係して怒る症状です。

記憶障害、言語障害、失行、失認、視空間認知障害など、「認知症」と判断される症状たちですね。

直前に起きたこと忘れたり、筋道を立てた思考ができなくなったり、予想外のことに対処できなくなったり。前はできたボタンをはめられないことや、道具の使い道がわからなくなる、ものの名前がわからなくなるなどのことです。認知症になれば誰にでも、これらの中核症状が見られます。

一方、環境の変化、周囲の人との関わりのなかで起きてくる症状を「BPSD」といいます。

BPSDは「認知症の行動と心理症状」を表わす英語の「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字を取ったのです。”Dementia”は認知症の意味なので、認知症の研究の中でわかってきた症状なのでしょう。

暴言や暴力、興奮、抑うつ、不眠、昼夜逆転、幻覚、妄想、せん妄、徘徊、もの取られ妄想、意欲低下、まとわりつき、拒食、失禁などは「中核症状」ではなく、BPSDにあたります。

その人の生活で抱えている問題や置かれている環境や、人間関係、性格などが絡み合って起きてくるため、BPSDは皆さんそれぞれの現れ方になります。BPSDがほとんど現れない人もいます。一方で、顕著にBPSDが出る人も。

家族や介護スタッフが対応に苦労する場合は、中核症状よりもBPSDのためと言えると思います。

本によると、BPSDの背景には、必ず本人なりの理由があります。また、周りの人のケアによって改善できるものととらえられます。BPSDが出ている人のニーズに沿ったケアが効果的とのことです。行動の背景にある「なぜ」を考え、本人の気持ちに寄り添った対応をすることで、症状を改善できる場合も多くあるようです。

認知症の人との聞き方・話し方の基本

  1. 笑顔で、優しい声で、温かく触れて安心感を与える
  2. 会話に集中できるような工夫をする
  3. 多くの中から選ぶのが大変んおで、選びやすく工夫をする
  4. 毎回、初対面だと思って接する
  5. 言葉を静かに待つ
  6. 返事は相槌を打ち、言葉を繰り返し、わかりやすく!
  7. その人の価値を低めるような言葉や動作は避ける!
  8. パーソン・センタード・ケアの3ステップを実践する

1人ひとりの個性に応じたパーソン・センタード・ケアとは

パーソン・センタード・ケアとは、「年齢や健康状態にかかわらず、すべての人々に価値があることを認め、尊重し、ひとりひとりの個性に応じた取り組みを行い、認知症を持つ人の視点を重視し、人間関係の重要性を強調したケア」です。(イギリスの老年心理学者トム・キットウッド教授が1980年代に提唱)

キットウッド教授は老年心理学者ということなので、おそらく高齢者のケアの1つとしてこのケアの提唱をされたと思うのですが、小さな子ども達の子育てをしている私には子ども達との接し方を考えるヒントをくれました。

そして、仕事で障害者の人のケアにあたっているので、このパーソン・センタード・ケアが「使える!めちゃくちゃ良い!」とも感じました。

パーソン・センタード・ケアの3ステップ「聞く」「集める」「見つける」

認知症を抱える人のためのパーソン・センタード・ケアを実践するために欠かせない3ステップ

  1. 思いを「聞く」
  2. 情報を「集める」
  3. ニーズを「見つける」

この3つです。

私はこれもまた認知症に限らず、特性や病気、何らかの生きづらさを抱えている人と接する時に有効であると感じました。

「寄り添った支援」とは、まさにこのことではないのかなと。

話がうまくできない人の体の動きや表情から気持ちを読み取るのが思いを「聞く」。そして、「情報を集める」こと。何かその人が不機嫌そうにしていたり、戸惑っている時に、その人にとって何か不都合なことが起きて不安な状態になっているのではないかと考えます。

認知症の人の行動や気分は、パーソン・センタード・モデルと呼ばれる5つの要素が複雑に関連し合って生じていると、キットウッド教授は言っています。

パーソン・センタード・モデル

「脳の障害」「身体の健康状態」「生活歴」「生活歴」「社会心理(環境ー対人・社会的・物理的)」の5つの要素のこと

最後の1つは「ニーズを見つける」ことです。認知症とともに生きる人達は5つの心理的ニーズを抱えています。

認知症の人が抱える5つの心理的ニーズ

「愛」のニーズを中心に存在する。

  • くつろぎ(やすらぎ)…最低限身体的な苦痛がない。心身共にリラックス。
  • アイデンティティ…自分が他の誰とも違う唯一の人であるということ。過去からつながっている今、存在しているという感覚を持つこと。
  • 愛着…結びつき。他の人との交流、信頼、つながること。
  • たずさわること…自らの能力を使ってすすんで何かを行おうとすること。意味のあるやり方で活動に関わること。
  • 共にあること…人々の輪に入って、歓迎されていて、受け入れられていると感じること

幅広く応用できるケアの考え方

認知症ではないものの、身体的に昔のように自由がきかなくなった高齢の知人たちと関わる中で本当は「やりたい」と思っていることが多くあることを感じます。

でも、身体の自由がきかないことや昔より心配する要因が増え、なかなか勇気がでない。それによって、人の輪に入る機会や地域で活動する機会が減っていく。

でも、その人達1人1人はとても素晴らしい考えを持っていて、何か良い方法が見つかったら、今までとは違う形で社会のために力を出せたり、人と交流ができるのではないかなと考えたりします。

また今回読んだ本の中には、認知症だけでなく、特性のある子供や障害者と関わる時にもヒントとなることが実践例と共に多く書かれていて、子育て中の人、自分とは違う人との接し方を学びたいと思っている人には役に立つかもしれません。